投資初心者のためのコラム

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 システムトレードを理解するためには、重要な4つのポイントがあります。
 そのうち、『勝率』『損益レシオ』『プロフィットファクター』の3つに関しては、これまでのコラムで説明してきました。
 *『そのロジックに優位性はあるか?』『ロジックの特徴とボラティリティー』を参照

 上記の3つの指標が表しているのは、『利益』に関する項目だけです。どのぐらいの利益が出るのか、どのぐらいの確率で出るのか、どのぐらいの比率で出るのか、などです。
 しかし、投資するにあたって、これだけでは充分ではありません。なぜなら、『リスク』に関するポイントが抜けているからです。
 実際の投資にあたっては、利益を出すことよりも、『リスク』についての視点の方が重要です。しっかりとしたリスク管理ができなければ、長期的に利益を出し続けることは不可能だからです。
 逆説的ですが、上手にリスク管理をすることが、利益を出すための必須条件なのです。
 正確にリスクを把握し、それに充分に対応できる体制を備えておくことこそ、長期的な利益を生み出す裏づけとして、有効に機能してくれるのです。

 今日は4つのポイントのうちの最後で、リスクを表す指標である『最大ドローダウン』についてお話したいと思います。

 最大ドローダウンとは、ドローダウンの最大のものです(笑)。では、ドローダウンとは何か?というと、資金の減少額のことです。よって、最大ドローダウンとは、「過去において最大に資金が減少した額」ということになります。
 トレードを繰り返すことによって、初めの資金(資本額)は増えたり減ったりします。優秀なシステムでも全勝などはありえません。優秀なシステムでも通常50〜60%程度の勝率ですので、その日のトレードが負け(損失)に終わることも多々あります。しかし、トレードを繰り返すことによって、負け金額よりも勝ち金額の方が多くなり、少しづつ利益が積みあがっていくのが優秀なトレードシステムです。日経225先物などは、基本的には上がるか下がるか2分の1ですので、トレードを繰り返せば繰り返すほど、確立は50%に収束していきます。コインの裏表を当てるゲームみたいなものですね。

 しかし、いくら確率50%だからといっても、それはあくまでも平均値です。ここがミソなのですが、時には一時的に表ばかり・裏ばかりが出ることもあります。交互に一回づつ出現するのではなくて、あくまでも最終的な平均が50%に収束するということです。


 またプロ野球を例にとって考えてみましょう。
 阪神タイガースは現在セリーグの首位を走っています。今シーズン2008年は開幕から非常に好調で、順調に勝ち星を重ねてきました。といっても、1カード3連戦を2勝1敗ぐらいのペースで成績を積み上げてきたのです。このペースだと単純計算で勝率66%ですね。
 しかし調子が良いときばかりとは限りません。というよりも、不調で連敗してしまうことが必ずあるのです。
 私はいつもセミナーで最大ドローダウンの説明をするときには、阪神タイガースの例を出してお話しているのですが、その時に「阪神タイガースは夏場に必ず連敗するんですよねー」という話を必ずします。阪神タイガースは毎年、夏の高校野球に甲子園球場を明け渡します。その間は他のチームの球場を転々と回るのです。阪神ファンの中では、これを『死のロード』と呼んでいます。昔は宿泊施設の環境が悪く、選手が移動や宿泊に非常に苦労したことからこの名称が付いたらしいのですが、最近は夏場のロード期間によく連敗するので、この名称に定着しているようです。
 この『死のロード』期間の連敗は、阪神ファンにとっては、恒例行事のようになっているのです。

 ですから、7月までの段階で非常に好調な成績をおさめていても、「夏場によく9連敗とかするんですよー」と私も言っていたわけです。
 そうしたら今年もやっぱり連敗しました。データ通り(笑)。いくらシーズントータルで好結果を残しても、途中に連敗してしまうことはあるのです。
 しかし逆に言えば、これは想定内の出来事です。慌てることはありません。過去のデータからも、夏場に連敗してしまうことは分かっているのですから、それを織り込んだ上で、戦略を立てれば良いのです。

 この阪神タイガースの連敗期間が、投資における『最大ドローダウン』の期間にあたります。野球の場合、損益レシオは1.0(勝ち1勝・負け1敗)ですから、単純に勝ち数と負け数の差(貯金)が成績になります。
 勝率60%で優勝したとすると、144試合で換算すると86勝・58敗で貯金28です。ほら、現実的な数字になるでしょ?
 このような優秀な成績でも、途中で連敗しているのです。そして過去のデータの中で、最も大きく連敗した期間が最大ドローダウンとなるわけです。


 厳密に言うと、もう少し複雑です。
 投資における最大ドローダウンについては、それまでの期間において最も資本額が増えた地点から、損失が連続して資本が減少していき、次に以前の最高到達地点を越えるまでの期間の中で、最も資本が減少した額が、最大ドローダウンになります。
 ですから、単純な連敗だけではなく、5連敗して1勝して、また4連敗すれば、その期間は最大ドローダウンとなります。

 しかし、シンプルな考え方で充分だと思います。
 過去に最も資本が減少した額を表す、と覚えておいて下さい。

 では最大ドローダウンから何を読み取れるかというと、リスクの大きさなのです。
 過去のデータ期間において、もっとも損失が膨らんだ期間が最大ドローダウンなのですから、そのシステムの最大資本減少額が分かります。これがそのシステムの想定最大リスク額です。ですから、最低でも最大ドローダウン額以上の資本がないと、投資を始めてはいけません。事前に想定しうる最大リスクに対して、資本に充分な余裕がある状態でないと、安心して投資することはできません。これが最低ラインです。

 しかし、ほんとうに安心して投資するためには、最大ドローダウン額だけでは充分ではありません。最大ドローダウン額が150万円だったとして、150万円の資本があれば運用は可能ですが、このようにギリギリの余裕が無い状態での運用に対して、あなたは安心できますか?
 過去のデータはあくまでも過去なのであって、未来を保証するものではありません。過去の最大ドローダウンを更新することもありえます。
 
 以前お話したように、投資には心理的側面が非常に重要になってきます。システム自体は優秀でも、最大ドローダウン期間においては一時的に損失が膨らみます。そのことによってシステムに対する信頼が揺らいだり、運用をストップしてしまったりする事態が発生するのです。これは完全に心理的な要因によるものです。
 このような事態を避けるためにも、余裕のある状態でリスクをコントロールすることが重要なのです。

 では、どのぐらいの比率なら安心して運用できるのでしょうか?
 個人的には、最大リスク額(最大ドローダウン額)の3倍以上の資本があれば良いと思います。言い換えれば、最大リスク額を自己資本の3分の1以内に収めるということになります。最大ドローダウン額が150万円であれば、450万円以上の資本額で運用するということです。
 もちろん、許容できるリスク幅は人によって異なりますから、ご自分の判断で必要資本額は決めて下さい。堅実な運用であれば、自己資本額の20%以下にリスク額を収める、という方もいます。

 投資をする際には、この『最大ドローダウン』の額に注目して、そこから必要資本額を割り出して下さい。利益だけでなく、想定するリスク額を把握した上で、実際に運用をスタートするのかどうかを判断して頂きたいのです。
 
 実際には、もっとこまかいリスクコントロール手法がいろいろとあります。
 例えば、『1日に許容する損失額を、自己資本の何%以内に抑える』であるとか、『1日に投入する資本額を、自己資本の何%以内にする』といったルールがそうです。これは個人的なリスク許容度に応じて、自分なりのルールを設定して下さい。
 

 このように、投資システムにおける財務諸表とも言うべき4項目をチェックすれば、そのシステムの本質を理解することができます。そして、そこからが投資するかどうかを判断するスタートラインになるのです。

 あなたも自分のしようとしている投資方法のリスクとリターンを事前にしっかりと把握し、安心して運用できるような準備に時間をかけてください。
 それがあなたのリスクコントロールなのです。



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『人気ブログランキング』投資編

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これまで『ロジックとは何か』についてお話してきました。
 『ロジック』を使った投資概念や意味、またその優位性などについては、ご理解頂けたと思います。
 しかし、ひとくちにロジックと言っても、その中身は様々です。マニアックに研究されている方にとっては、「このロジックはこういう特徴がある」とか、「このロジックはこういう風に使えば良い」などのように、ロジックの内容や特徴を即座に理解できるのかもしれませんが、システムトレードにあまり詳しくない一般の方にとっては、ロジックとは、よく分からないブラックボックスでしょう。
 そこで今回は、大まかなロジックの特徴や見分け方をお話したいと思います。

 さて、トレード手法にはさまざまな方法がありますが、取引の期間(頻度)によって分けることができます。
 まず、『デイトレード』。これは、毎日取引をする手法です。1日回の場合もあれば、何回も取引を繰り返すロジックもあります。デイトレードの場合、小さな利益をコツコツと積み重ねるのが特徴です。年間の内に、大きな流れ(トレンドと言います)が発生することは、そんなに多くありません。大きなトレンドに乗ることができれば、1回の取引で大きな利益を得ることができますが、大きなトレンドをを待っていては、取引回数が少なくなってしまいます。デイトレードの場合、1日の中でアップダウンする相場の小さな動きを狙って、トレードする訳です。1回の利益は少ないかもしれませんが、それを1ヶ月、1年と繰り返していくことによって、トータルでは良いリターン率を目指す、という戦略です。

 1日の中でほんとうに小さな値動き(最低取引単位を『1ティック』と言い、数ティックの値動きで売買する)を狙って売買する手法を、特に『スキャルピング』と呼び、FXなどでよく見られます。
 デイトレードにとっては、小さな売買を繰り返すことが前提となっているため、1回の取引で大きな損失を被ることは避けなければいけません。したがって、損切りの幅は小さく設定するのが普通です。ロジックが意図する方向へ相場が動かなかった場合、反対方向へ相場が動くのをじっと待っているのではなく、早い段階で損切りしてしまうことが多いのです。これはロジックの意図する方向性からすれば当然です。逆に相場が反対方向に動いている状態でそのままポジションを保有していると、どんどん損失が膨らんでしまうことになります。運が良ければ相場が反転してゼロベースまで戻ったり、利益を生み出すこともあるかもしれませんが、そのようにならなければ、大きな損失を抱えた段階で損切りしなければならな状態になり、投資を続けていくのに大きなダメージとなってしまいます。
 トレードにとって一番重要なのは、「トレードを続けられる状態を維持する」ということなのです。利益を上げるのはその次です。
 
 このように、デイトレードという戦略を取る以上、損切りと利益確定の設定は、避けて通れない問題です。損切りの際の事情と同じように、利益が出ている場合でも、相場が反転してしまう危険性があるため、早めに利益を確定してしまう必要があります。
 よって、ロジックと利益確定(略して『利確』)と損切りは、セットで考えた方が良いでしょう。利確と損切りのラインを変えるだけでも、そのロジックのパフォーマンスは大きく変わってきます。
 まとめると、デイトレードの特徴は、小さな値動きを狙って売買を繰り返し、利確と損切りは小さく設定する、ということになります。
 このように理解しておけば、「デイトレードって、1日の中で売買することだよね?」という認識の方とは全く違ったレベルでの理解ができることでしょう。ロジックの特徴を認識することは、自分のリスク管理や投資戦略において、非常に重要ですから。
 ロジックの中のテクニカル指標の組み合わせを理解することよりも、こちらの方が重要だと私は思います。

 次に『スイングトレード』です。これは2〜10日程度の取引期間で行う取引手法です。
 デイトレードはその日の内にポジションを決済してしまいますが、スイングトレードの場合はポジションを翌日以降に持ち越して、反対売買による決済をするタイミングを待ちます。その間にはもちろん相場はアップダウンしますし、含み損や含み益も発生するでしょう。
 ある程度の時間、ポジションを持ったままにするのですから、その間の小さな値動きは無視することになります。当然、利確と損切りのライン設定はデイトレードよりも大きくなります。例えば損切り幅を小さく設定してしまうと、小さな波の値動きですぐに損切りラインに引っかかってしまい、その後の上昇相場に乗れなかったり、勝率が悪くなったりします。
 ある程度の大きさの相場の流れや動きを想定して、中程度の利益を狙いに行くのがスイングトレードと言えましょう。
 ですから、1日の相場のアップダウンで一喜一憂する必要はありません。逆に優位性のあるロジックで運用しているのならば、決められたルール通りに取引を実行することが重要であり、小さな相場の変動でハラハラドキドキしていては、体が持ちません(笑)。
 忙しい人などでも取り組みやすい取引手法であるため、個人投資家には非常に人気があります。
 
 最後にデイトレード・スイングトレード以上の期間に渡ってポジションを保有する投資手法は、『中長期投資』となります。
 これは、ある程度の大きな相場の動きを狙って、利益を取りに行こうという戦略です。
 大きな上昇や下降の相場のトレンドに乗って、大きな利益を狙います。そのようなはっきりとしたトレンドが発生することは年間に何回もありませんから、取引回数は少なくなります。ヒットやバントなどよりも、1発ホームランを狙う作戦、と言えましょうか。
 この場合の利確と損切りは、難しい問題があります。取引回数が少ない分、もし1回の取引で大きな損失を負ってしまえば、取り返すチャンスは少なくなります。しかし、小さな損切り幅で設定すると、年に数回しかない大きなトレンドが発生する時以外は、騙しのサインとなる訳ですから、小さな損切りを繰り返すことによって勝率が下がってしまいます。しかし、最初からそいう状況を想定した上で、1点2点取られても、1発ホームランでチャラにしてやる、という戦略も考えられます。なんだか高校野球の監督みたいな考え方になってきましたね(笑)。
 小さな損失を繰り返しても、大きなトレンドに乗ることができれば、そこで大きな利益を取れるわけですから、勝率が仮に20%以下でも充分に優位性のあるロジックは構築できると思います。
 しかし、初心者の方にとっては、あまりにも勝率が低いと、「このままこのロジックで運用して良いのだろうか?」という疑念との戦いが始まります。小さな損失が繰り返されることによって、疑心暗鬼になってしまうのです。
 そういう事情で、優位性はあっても勝率が低いロジックで運用するには、リスクコントロールの概念や精神力が重要になってきます。
 自分が運用しているロジックの特徴をしっかりと理解することは、運用の成功に直接関わってくる問題なのです。

 
 このように、取引期間における投資手法の分類によって、大まかなロジックの特徴が見えてきました。よく投資の本に書いてあるような「デイトレードとは日計り取引、スイングトレードとは2〜10日、それ以上は中長期投資」などといった言葉だけの理解では、自分の実際の運用に役に立ちません。このように、取引期間によって自然とロジックにも違いが出てくることを理解していれば、事前にある程度の予測がつきますし、どのようにリスクコントロールすれば良いのかの指針になります。
 これに合わせて、前に説明したプロフィットファクター・勝率・損益レシオの考え方を使えば、よりいっそうロジックや投資戦略の理解が深まることでしょう(*『そのロジックに優位性はあるか?』参照)
 逆に言えば、ここまで理解して初めて、実際の投資戦略を考える土台ができたとも言えます。この理解度に達する前の段階で投資を始めてしまうということは、非常に危険であり、成功率が低くなってしまうことはご理解頂けるでしょう。
 ロジックの特性や戦略によって、必然的にレバレッジをどのぐらいにするのかという判断の基準にもなります。レバレッジのコントロールは投資の成功にとって非常に大きな影響を与えますから。
 「自分が理解できないものには投資しない」という世界ナンバー1の投資家であるウォーレン・バフェットの言葉は非常に示唆に富んでいます。
 自分のやっていることが分からなければ、成功するはずありませんよね。


 その他にも重要な概念があります。それは『ボラティリティー』と呼ばれるものです。ボラティリティーとは、『変動幅』という意味で、値動きの大きさを表します。「ボラティリティーが大きい」とは、「価格変動性が大きい」という意味になります。
 
 デイトレードの場合、1日におけるボラティリティーを狙って取引するわけです。ですから、相場が動いてくれることが前提となります。しかし、毎日ある一定の値動きがあるわけではありません。時には相場がほとんど動かない日もあります。そのような時はデイトレードに向いていない相場状況の日である、と言えますね。
 また、投資対象とする市場の特性もあります。日経225先物などは、取引量も大きく、日中のボラティリティーも比較的ありますので、デイトレードに向いている市場と言えるかもしれません。
 商品市場については、ボラティリティーが非常に大きい市場です。大きなトレンドを形成することが多く、1発ホームランを狙いやすい市場と言えるかもしれません。しかし、日経225先物やFXと比べて、取引量が小さいのが難点です。トレードにおいて損切りが非常に重要であることはお話しましたが、商品先物市場において投資する場合、損切りラインに達したから損切りしようと思っても、即時に損切りできないという事態が発生する確率が高いのです。取引量が小さいということは、売買の相手を見つけるのが難しい、ということになります。いざ売ろうと思っても、相場全体が下がっている時には、誰も買いたい人がいなくなってしまい、取引が成立しないまま、値段だけが下がっていく、という悪夢のような状況がありうるのです。
 このような問題点がありますので、みなさんも自分が取引しようと思っている市場の規模やその期間の取引量などをチェックしてみる必要がありますね。

 次にFX市場ですが、ここでも取引量の問題があります。米ドルやユーロなどの主要通貨では問題ないのですが、その他の新興国の通貨の場合、取引量が小さく、極端に値動きが大きくなってしまう場合があります。1つのトレンド(特に下降局面)が発生した時、反対売買する人がいなくなってしまい、どんどんボラティリティーが大きくなる傾向があります。ですから、スワップ金利の高さだけに注目するのではなく、その通貨市場の取引量やボラティリティーを考慮しておくことは非常に重要です。

 
 ここまで見てきたように、市場ごとの特性、取引手法の特性、ロジックの特性などをしっかりと理解した上で、自分の投資戦略を立てる必要があります。このような理解がないままに投資をスタートしてしまうと、どのようにリスクコントロールしたら良いのかすら判断できないという事態に陥ってしまいます。最大のリスク管理は、「自分がやっていることを理解する」ことなのです。
 ニュースや雑誌記事などに煽られて勢いで投資をスタートするのではなく、事前勉強にしっかりと時間と労力をかけることこそ、リスク管理の必須事項なのです。



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『人気ブログランキング』投資編

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 以前に『ロジック』についてお話しました。もう一度繰り返すと、過去のデータを基にある一定の売買ルールとして構築したものを、投資における『ロジック』と呼びます。『ロジック』という言葉の本来の意味は『論理』ですから、投資における『ロジック』も合理性があり、客観的で一貫したものである必要があります。その時々で感情に任せてトレードするという方法とは対極にある概念です。

 さてこのロジックですが、日経225先物に限らず、FXや株式などをはじめ、あらゆる投資市場において利用できる概念であり、手法です。首尾一貫した売買ルールなのですから、投資対象を選びません。もちろん、過去のデータからロジックを構築するのですから、対象となる投資市場によってロジックの中身は違ってきて当然です。市場によって、通用するロジックと通用しないロジックが出てくるのです。もちろん共通する指標をロジック作成に利用することは多々あります。特にテクニカル分析における有名な指標である『移動平均線(MACD)』や『RSI』『ボリンジャーバンド』などは、どの市場におけるロジックでもよく使われます。
 結局は、ロジックとは『何を』『どのタイミングで』『どのぐらい』『売るのか買うのか』といったポイントを決定するものですから、その基準としてテクニカル分析の手法を使うことは自然な流れであるとも言えます。

 ただ、テクニカル指標が絶対である、ともまた言い切れません。一つの有力な指標には違いありませんが、テクニカル分析を絶対視するのも問題があるでしょう。この『テクニカル指標の絶対視』という誤謬は、実はよくある話で、この迷路に入り込んでしまうと、なかなか抜け出せないのが特徴です。あくまでも仮説としての一指標に過ぎないテクニカル分析という狭い世界の中だけで、すべて判断しようとしてしまうと失敗するのです。ビジネスでもそうですが、全体を見渡せる俯瞰的な視野やバランス感覚というのが投資の世界においても求められます。
 みなさんもこのような危険性を認識しておいて下さい。


 ここからが本題なのですが、今日は『ロジックの有効性』について考えたいと思います。ロジックの有効性とは、そのロジックが「ちゃんと利益を生み出す売買ルールになっているのかどうか」、というのがシンプルな答えです。
 そもそも利益の生み出せるロジックになっていないと意味が無いわけですが、これがそう簡単にいかないのです。利益が生み出せるロジックのことを『優位性がある』『エッジがある』という言い方をします。『優位性がある』ロジックを見つけ出すことは、非常に困難なのです。まず仮説に基づいてロジックを構築し、それを過去データに基づいて検証をする、という順序を取ります。

□ (仮説 → 過去データで検証 → 修正 → 過去データで検証) → ロジック完成
 * (  )の作業を繰り返す

 ロジック作成はこのようなフローになります。
 こうしてより『優位性のある』ロジックを構築していくというわけです。
 では、ロジックの『優位性』については、どのように判断したらよいのでしょうか?

 まず、以前お話したように(*『投資で全勝なんてありえませんから!』参照)、勝率というのがロジックを判断する際の重要なファクターになります。しかし、勝率だけでは充分でないことも以前述べました(*『ロジックって何だ?』参照)。今日は勝率以外の重要なファクターについてお話したいと思います。

 それは、『プロフィットファクター(PF)』という概念です。
 まず算式で示すと、

□ プロフィットファクター = 総利益 / 総損失

 という単純な公式になります。
 これはそのロジックによって生み出された『利益の総額』÷『損失の総額』です。ということは、この時点で『ある程度の損失は出る』ということを前提としていることが分かりますね。しかし、ロジックに基づいて繰り返される売買によって、損失を上回る利益が出ていれば、そのロジックには『優位性がある』とみなすことができるのです。
 例えばあるロジックの総利益が200万円/年、総損失が100万円/年 であった場合、プロフィットファクターは 200万/100万 = 2.0 となります。これはとても『優位性がある』ロジックである、と言えます。
 もちろん、プロフィットファクターが1.0であればそのロジックは『トントン』、1.0以下であれば『優位性が無い』ロジックである、と言えます。極言すると、繰り返すほど損失が出るロジックである、ということになります。
 優位性のあるロジックとは、プロフィットファクターが1.0以上あることが前提となります。

 では、以下の例はどうでしょうか?
□ ロジックA  年間利益が1000万円
□ ロジックB  年間利益が100万円


 このAとBのロジックでは、どちらがより優秀なロジックなのでしょうか?
 答えは「これだけでは分からない」です。
 利益額だけ見ても、ロジックの優位性は分からないのです。

 もしロジックAが総利益3000万円に対して、総損失が2000万円だとしたら、プロフィットファクターは1.5になります。
 対してロジックBは総利益200万円で、総損失が100万円だとすると、プロフィットファクターは
2.0になります。
 ロジックAはプロフィットファクター1.5、ロジックBはプロフィットファクター2.0となり、ロジックBの方が優秀である、と言えます。
 このようにプロフィットファクターとは、ロジックの効率性を比べる指標でもあるのです。

 ただ、プロフィットファクターだけでは、まだそのロジックの概略を示しているに過ぎません。1回の取引に対してどのぐらいの利益・損失が出るのか、といった点は分かりません。そこで次の概念が出てきます。それは『損益レシオ』です。


 では続いて、『損益レシオ』の説明に入ります。
 損益レシオは、次の算式で表されます。

□ 損益レシオ = 1取引あたりの平均利益額 / 1取引あたりの平均損失額

 この『損益レシオ』によって、取引1回あたりの平均利益額と損失額の比率が分かるのです。
 また、損益レシオの算式は、次のように詳述できます。

 1取引あたりの平均利益額 = 総利益 / 勝ち(利益が出た)取引の回数
 1取引あたりの平均損失額 = 総損失 / 負け(損失が出た)取引の回数


 このように、1取引あたりの利益額・損失額が分かるのです。
 これによって、1取引あたりのボラティリティー(変動幅)が分かります。


 そこで、勝率と損益レシオの両方を見れば、どのようなロジックかが掴めます
 例えば、

□ ロジックA 勝率90% 損益レシオ0.1
□ ロジックB 勝率50% 損益レシオ1.3
□ ロジックC 勝率20% 損益レシオ 5.0


 という3つのロジックがあったとします。
 取引回数をそれぞれ100回づつとした場合、どのようになるでしょうか?
 

□ ロジックA 
 勝率90%なので、勝ち取引回数90回×1万円=90万円・・・総利益額
 負けトレード回数10回だが、損益レシオが0.1なので、平均損失額は10万円になる(勝ち1対負け10)。とすると、負け取引回数10回×10万円=100万円・・・総損失額
 ということは、合算すると、総利益90万円÷総損失100万円=プロフィットファクターは0.9となり、このロジックは『優位性が無い』ということが判明してしまった。
 いくら勝率が高くても、損益レシオが低ければ、利益は出ないということなのだ。
 この点を特に注意して頂きたい。

□ ロジックB 
 勝率50%なので、勝ち取引も負け取引も共に50回づつ。
 損益レシオが1.3なので、勝ったときは平均1.3万円、負けたときは平均1万円、という取引になる。
 よって、50回×1.3万円=65万円・・・総利益額
 50回×1万円=50万円・・・総損失額
 プロフィットファクターは 65万円/50万円 = 1.3 となる。
 このように、勝率が50%でも、損益レシオが1.0以上であれば充分に利益が出る、ということが分かる。全勝する必要は無いのだ。少しでも勝率が高いに越したことは無いが、ほどほどの例でも充分に利益が出ることの証明になるであろう。利益が出るかどうかは、勝率と損益レシオの両方を見る必要がある

□ ロジックC 
 勝率が20%なので、勝ち取引は20回、負け取引は80回と、大幅に負け取引の方が多い。しかし損益レシオが5.0と非常に高い比率を示している。
 勝ち取引20回×5万円=100万円・・・総利益
 負け取引80回×1万円=80万円・・・総損失
 ということは、プロフィットファクターは1.25となり、充分に優位性のあるロジックであることが分かった。
 このように勝率が低くても、極端な話、勝率が10%以下でも損益レシオが高ければ、利益は出るということなのだ。
 このように、勝率と損益レシオを掛け合わせたものが、利益として出てくるのだ。それに勝ちと負けの取引回数を掛け合わせると、最終的な利益額が明らかとなる。

 この、『勝率』『損益レシオ』『プロフィットファクター』の3点は、さまざまなロジックを比較する際に、非常に重要な考え方となるのである。
 世の中にはいたずらに高勝率を謳うロジックや、膨大な利益額を喧伝するものが多い。しかし、上記の3点を比較検討の指標として利用した時、そのような誇大宣伝に惑わされたり、騙されたりすることは無くなるだろう。

 具体的にどのぐらいの優位性を持ったロジックなのか? という中身まで詳細に検討すれば、明確にロジックの優位性を図ることができるのだ。
 みなさんもこのような視点を持って、ロジックを検討して頂きたい。
 そうすることが、自分の身と資産を守ることになるのだから。





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近頃、原油や鉱物などの商品先物相場の大幅な値上がりがニュースに取り上げられることが多い。最高値からはある程度下落し、若干の落ち着きは見せてきたものの、長期的に見ればまだまだ価格が上昇する可能性を孕んでいる。
 特に原油はここ1年でも約2倍、5年前の価格と比べると5倍の価格(原油先物1バレル約30ドルから約150ドル)になっており、驚くべき価格急騰である。
 これにより、原油を原料としたり燃料としている企業にとっては、非常に大きな打撃となっている。
 もし自分が運輸会社や石油を主原料とする製造会社を経営していたら、と想像すると、ぞっとするほどのコスト上昇である。数10%のコストアップでも厳しいのに、数倍のコストアップとなると、もはや合理化や企業努力でなんとかなるレベルを遥かに超えてしまっている。かといって販売価格にコスト上昇分をそのまま転嫁することも不可能であり、事業構造やビジネスモデルなどの根本的な見直しを迫られている業界もあるであろう。

 このような原油の価格急騰をうけて、相場に対する投機的資金の影響の大きさが喧伝されている。実際の需要と供給の調整による価格変動よりも、相場で売買することによって投機的利益を得ようとする投機家(スペキュレーター)の資金が、価格を大きく上昇させているというのである。このような文脈の中で、投機家(スペキュレーター)の存在が大きくクローズアップされているのだ。

 投機的資金が、大きく相場の価格変動に影響を与えているのは事実である。実際の需要に比べて、今後の価格上昇を見越した投機家が買いポジションを取ることによって、さらなる価格上昇を招いてしまっていることも、また事実である。
 だから、「投機家(スペキュレーター)はけしからん!」という論調である。「投機的資金の動きによって、実際の生活が脅かされている!」という気持ちは分かる。原油はあらゆる産業で必要とされており、その価格上昇はほぼ全ての産業に影響を与えてしまう。そして企業のコストアップは消費者の購買価格に跳ね返ってくる。消費者物価が上がり、生活が苦しくなってしまうという悪循環に陥るのだ。

 しかし、本当に投機的資金や投機家が悪いのであろうか?今日はそのポイントについて考察してみたい。

 物の価格は、相場(市場)によって決まる。相場には売り手と買い手がおり、お互いの必要に合わせて売買を行う。買いたい人が多ければ価格は上がり、逆に売りたい人が多ければ、価格は下がる。これが需要側の論理。供給側から見ると、物がたくさん供給できれば価格は下がり、少量しか供給できなければ価格は上がる。この需要と供給の2側面の論理が相場という市場でぶつかり、価格のアップダウンによって調整される。そして両者が合意できる(売買してもよい)点で価格が決まるのである。これが経済学の教科書には必ず載っている『需要と供給の価格調整メカニズム』である。
 *『需要と供給という視点』を参照

 では、売り手と買い手はどこに存在しているのかというと、もちろん世界各地に散らばっている。だからみんなが集まっていっせいに売買することは難しい。だから、現在では主要な『取引所』を介して、世界中の人や企業が取引を行っているのである。例えば、原油先物でいうとニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI原油先物が有名である。この市場は原油先物中でも最も市場参加者や取引量が多く、世界中の原油先物取引の主要指標となっている。『主要指標となる』という意味は、ここで決められる価格が他の市場や世界中の取引の目安や基準になるということである。

 ここで覚えてほしいポイントがある。それは、『最も大きな市場、市場参加者(取引量)の多い市場が他の市場の目安になる』ということである。夫も大きな市場で価格が決まれば、その他の市場もそれにならって価格決定がなされるのだ。

 例にならって考えてみよう。
 東京証券取引所の原油価格が100円/1リットルだったとする。もしそれが大阪証券取引所では80円だったとしたら、あなたならどうしますか?
 大阪証券取引所で80円で買って、東京証券取引所で100円で売りませんか?同じ商品(ここでは原油)なんだから、安く買って高く売れば利益が出ますよね? ということで、この取引では20円の利益が出ました。これを『裁定取引』と言います。これに気づいた人達は、この裁定取引をどんどんやり出します。ということで、大阪証券取引所の原油の価格(買いの価格)はどんどん上昇していきます。もともと市場参加者や取引量が小さいのですから、すぐに価格は上がってしまいます。こうして、最終的には東京証券取引所と同じ値段になるまで裁定取引が行われます。この『裁定取引』によって、両取引所の価格は同じところまで調整されるのです。

 次に逆パターンも考えてみましょう。
 東京証券取引所の原油価格は同じく100円/1リットル。大阪証券取引所では120円/1リットルだったとします。
 ここで合理的な行動は、大阪証券取引所で120円で売って、東京証券取引所で100円で売る。これで同じく20円の利益が取れました。

 このように、最も大きな市場が他の市場や取引に影響を与えるのです。取引参加者や取引量が多いほど、いろいろな思惑の参加者がいるのですから、最も妥当性のある価格に調整される、というのは分かると思います。

 この『裁定取引』に参加している人は、実際の需要として原油を売買しているのではありません。取引することによって利益を得ようと行動しているのです。この人達を『投機家(スペキュレーター)』と呼びます。
 『投機家(スペキュレーター)』の存在は、適正な価格で取引されるために、必要なのです。そもそも市場参加者が少なければ、取引自体が成り立たない場合もあります。この点はよく忘れられがちなのですが、市場全体が下げている段階では、売りたい買いたい人(市場と逆の売買をする人)は非常に少なくなってしまいます。売りたい人ばかりでは、取引自体が成り立ちません。そこで取引による利益を狙って、買いポジションを取る投機家がいてくれるからこそ、取引が成立するのです。買いか売り、どちらか一方だけでは価格すら決まらないのです。
 『投機家(スペキュレーター)』は、市場による価格調整にとって必要な存在なのです。


 次に、現物と先物の違いについて考えてみよう。
 現物とは、ここでいる正味の原油取引のことである。これ以上説明のしようが無い(笑)。
 先物とは、未来の売買について現時点で価格や数量などを約定する取引である。これでは分かりにくいので、もっと具体的に言うと、「1年後に決済する取引を、今決めてしまう」取引のことである。先物取引の場合、1年後の決済日に現物(原油)を貰ったり渡したりするのではなく、反対売買によって決済されることが多い。これは実需ではなく取引によって利益を得ようとする投機的取引であるからだ。
 先物取引の良い点は、取引に要する金額が少なくてすむからである。現物取引なら、取引する原油価格のずべての金額が必要であるが、先物の場合、一定の証拠金だけで済むのである。リスクヘッジや金融取引として先物を売買する人から見れば、これは非常に魅力的なポイントである。

 このように、「これから原油価格は上がる」と思っている人と「下がる」と思っている人が多数いるからこそ、その時々の価格が適正に決まっていくのである。
 昨今、現物を1とすれば、先物は100ぐらいの取引規模で行われている。現物と比べて、先物の方がずっと市場規模が大きいのである。これは上記のような利点があるからである。また、金融取引において、先物はオフバランス(貸借対照表に載せなくてよい)という利点もあって、これは非常に便利である。
 であるから当然、先物市場にて売買する人が増える。これから価格が上がると思えば買い、これから価格が下がると思えば売りから入るのだ。そして最初に決められた期日に反対売買(買っていれば売り、売りから入っていれば買い戻す)をする。または、期日が来るまでに、市場において反対売買して利益や損失を確定してしまう場合もある。このように、市場の中には様々な思惑で取引する多数の人がおり、それらの多数の取引を経て価格が決まっているのである。

 実際の需給における取引が1なのだから、100の規模がある先物市場が取引の指標になるのは当然の結果である。 もしここで価格差があれば、また裁定取引の機会が生まれるのだから。だから、実際の原油の価格は、先物の価格の動向によって決まっていくのである。みなさんがニュースなどで見る原油価格もおそらく先物の価格が表示されているはずである。それはこういう理由なのだ。

 みなさんも、何か金融取引される場合には、市場規模の問題をしっかり考慮に入れてほしい。もしその市場が取引規模が小さい場合、非常に大きな価格変動が起こる場合がある。また、売りたいと思っても誰も買い手がいなくて、売買が成立しないままに価格だけが下がっていくというような悲惨な状況にもなりかねない可能性があるのです。

 このように、市場にとって投機家(スペキュレーター)の存在は必要不可欠なのです。かれらの存在によって、売買が成立しているのだ。
 だから、一概に「投機家が悪い!」と断言してしまうのは、言い過ぎだと私は思う。彼ら投機家の実態とは、みなさんがお金を預けている銀行や保険会社、年金基金などの資金を運用している人達なのだから。結局は、一方的な悪人などほとんど存在しないのです(市場について)。皆さんも知らないどこかで、実は関わり合いがあるのです。現在の高度化した資本主義社会では、複雑にからみあってみんなが存在しています。だから、誰かは悪者・自分は善人、と単純に言い切れない部分がたくさんあるのです。
 金融取引を知っていくと、そのような構造が見えてきたりします。
 自分が生きている世界を「関係無い」と知らないふりをするのではなく、より積極的に知っていくことが、今後はますます必要になってくるのではないでしょうか。





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 今回はいよいよシステムトレードの中身に入っていきたいと思います。

 そもそも、「システムトレードとは何か?」というおさらいからお話したいと思います。
 投資手法を大きく分けると、2つに分類できます。『裁量トレード』と『システムトレード』です。
 *『投資で全勝なんてありえませんから!』を参照
 
 まず『裁量トレード』とは、『個人が自分の判断で投資をすること』を指します。人によってそれぞれトレードする根拠はさまざまでしょうが、自分の経験やカンなどに基づいて投資判断やトレードを行います。属人的投資手法と言えますね。これは他人が簡単に真似することはできません。かつて長嶋茂雄が「長嶋さんはどうやってボールを打つのですか?」と聞かれ、「来た球をスパーンッと打ちます」と答えたようなものですね(笑)。野球の天才ともいえる長嶋氏は、理論的バックボーンやメカニズムなどを明確に意識してではなく、非常に感覚的なカンなどによってバッティングを行っていたということが分かるエピソードです。
 裁量トレードとは、この長嶋氏のバッティング論に通じるものがあります。非常に個人的な感覚に頼ったトレード手法と言えましょう。ですから他人に教えたり、論理的に検証したりすることが難しいのも当然です。
 天才であるがこそ可能となる手法、と言ってもいいかもしれません。なぜなら、明確な基準や論理性などがなければ、失敗した時に問題点を抽出して修正したり、ある一定のパフォーマンスを出し続けたりするのが非常に難しいからです。
 投資の世界において、裁量トレードで勝ち続けられる人の数が5%以下だと言われるのも頷けます。

 次に『システムトレード』ですが、これは『過去のデータを統計的に分析し、より有効なトレードルール(取引条件や取引タイミングなどの判定)を見つけ出し、そのルールに従って感情を排除した取引を淡々と続けていく、という手法』
です。先ほどの『裁量トレード』とは対極にある概念です。
 経験やカンといった属人的要素を排除し、明確に一定のルールを設定します。それに沿ってトレードを繰り返していくのです。そのトレードルールを『ロジック』と呼びます。
 明確なルールが決まっているのですから、『ロジック』を修正することも簡単ですし、一定のパフォーマンスを出しやすいというメリットがあります。また、有効なロジックを発見した場合、他人に教えたり、共通の投資方法を取ることが容易にできます。
 統計的データを基にして有効性を検証しているのですから、リターンやリスクの範囲などを予測することが比較的容易です。これは非常に大きなメリットです。裁量トレードの場合、短期間で莫大なリターンを得ることも可能ですが、投資金額がゼロになってしまうリスクも大きくあります。変動幅が大きく、事前にパフォーマンスやリスクなどを予測することができません。
 その点システムトレードの場合、きちんと検証されたロジックであれば、ある程度の予測は可能です。投資において、最大のリスクは『予測できない』ことにあるのですから、ある程度のパフォーマンスが予測できるシステムトレードは、非常に有効な手法であることが理解できると思います。
 野球でいえば野村監督のやっている『データ野球』がこれに近いかもしれません。

 さてこの『ロジック』ですが、勉強を始められた方にとっては非常に難しく感じられるかもしれませんが、意外にそんなことはありません。誰でも理解できる概念なのです。ある一定のルールに基づいてトレードすれば良いのですから。

 例えば、あなたに証券会社の営業担当から電話が掛かって来たとします。その営業担当者はよく電話を掛けてきては、「この銘柄がおススメですよ」とか「この銘柄が今買いです!」などと株式の購入をあなたに勧めます。
 良い感じの人なので、あなたはこの営業担当者を信じてみることにしました。そこでルールを決めます。「この営業担当者の言う通りに売買してみよう」と。これでロジックの完成です。売買ルールは『証券会社の営業担当者が言う通りに売買する』というものです。
 これも立派なロジックです。ここにはあなたの疑念や躊躇などは入れません。ただ淡々と言われた通りに売買を繰り返すのです。
 これによって、1年後、このロジックのパフォーマンスが分かるでしょう。おそらくあなたの投資資本は減っているでしょうが・・・。

 このロジックの欠点は、事前にパフォーマンスの予測や検証が出来ないということです。有効性が検証されていないロジックなのですね。証券会社の営業担当者にとっても、明確な論理に基づいてあなたにお勧めしているわけではありません。おそらく、上司から言われた通りに営業トークをしているのでしょう。また、証券会社のアナリスト(分析専門の部署の人)が送ってくるレポートに基づいて、あなたに電話しているはずです。
 でも良いのです。あなたにとってはロジックに基づいて投資していることにはなりますから。こうして1年投資してみた結果、営業担当者が言う予測がことごとく外れたとします。「わざと外してるんじゃないのか?!」と言いたくなるぐらい、結果は悲惨なものでした。とすれば、逆のロジックが考えられます。『営業担当者が○○を買え、と言ったら売る。売れと言ったら、買う』というロジックです。これを『逆張りロジック』と呼びます。そして1年このロジックに基づいて売買すれば、同じようにこのロジックの有効性が分かるのです。

 これは非常に極端な例です。しかし、『ロジック』というものを理解するには分かりやすい例えでしょう。ある一定の売買ルールに基づいてトレードを行えば、それはロジックなのです。
 この例での問題点は、そのロジックの有効性を事前に検証できなかったことです。大切な投資資金をかけてトレードを行うわけですから、そのロジックが本当に有効なのかどうか、利益を生み出すものなのかどうかを事前にしっかり検証する必要があります。しかし、この例では検証しないでいきなり投資してしまっていますね。これが問題なのです。
 運がよければそんなロジックでも成功するかもしれません。しかしそれは裏づけのない成功であり、今後長期的に利益を取り続けられる可能性を増やしていることにもなりません。
 大切なのは、どのような根拠を持って投資するか、なのです。この根拠や論理があるからこそ、悪い点を修正したり、改善したりして自分の投資スキルやパフォーマンスを上昇させていくことができるのです。
 一番悪いのは、「なんとなく」投資してしまうことです。その時々のニュースや人の言うことなどに振り回されながら投資してしまうと、どこが悪かったのかを検証することさえできません。自分のなかで明確なルールを持ち、失敗や成功を繰り返しながら、少しづつルールを精緻化していく。この作業こそが投資に必要なことなのです。

 会社の経営でも同じことが言えます。
 ある営業マンに販売をさせる場合、「とにかく気合で売って来い!」というのが裁量トレードで、「過去にこういうデータがあって、こういう営業戦略とトークを使えば○○%の確率で販売できるはずだから、こういう売り方をして来い」と具体的に指示した方が、長期的に良い成績が出ると思いませんか?

 「利益を出したい!」というのは根性論と変わりません。
 ビジネスと同様、投資においても『科学的に』行動する必要があります。『科学的に』というのは『再現性がある』ということです。しっかりとした根拠に基づき、効率的な行動を取る。そして失敗から学び、よりよく改善していく、というのが科学的態度だと思います。
 その意味でも、システムトレードという手法は、投資する際には必ず知っておくべきポイントなのです。
 投資はかならず成功する保証はありません。だからこそ、失敗から学び、より成功する確率の高い投資を行っていくことが大切なのです。
 *『自分の投資を客観視する』を参照

 
 また、『ロジック』の有効性についての問題もあります。
 投資の世界には、さまざまなロジックがあります。それらは主に『テクニカル分析』によって構築されたロジックです。移動平均線やボリンジャーバンド・RSIなどの様々な指標を組み合わせ、相場の流れをチャートによって分析し、ロジックを作成するのが一般的です。世界的にも、有名なロジックはたくさんあります。

 しかし、こうやって作られたロジックにも周期性があります。それは、「有効だ」と実証されたロジックがあれば、相場参加者の多くがそのロジックを使うようになります。そうすることによって、ロジックのパフォーマンス自体が変わってしまうのです。それによって、過去には良いパフォーマンスを上げていたロジックが、利益を生み出さなくなってしまうこともあるのです。
 そして利益を生み出さなくなったロジックは、また使われなくなります。そして誰も使わなくなったそのロジックは、また利益を生み出すようになる・・・。このように、有効なロジックでも周期性があったりするのです。

 相場において、「売買ルールが回りにバレている」というのは致命的なマイナスになります。これは戦争などの例を考えれば分かりやすいでしょう。
 相手が「いつ・どのように」攻めて来るのか事前に分かっていれば、それに応じた最善の戦略・戦術を取ることができますから。
 相場とは、戦いの場なのです。ですから、みんなが「このロジックが有効だ」と認識した瞬間から、負けが始まっているのです。

 また、短期的に有効なロジック、というのもあります。相場状況に合わせて、適切なロジックを使いこなすという戦略も大いに考えられるでしょう。
 もちろんその前提として、事前に大きな相場状況が予測できる、という点は必要ですが。

 このように、ロジックといえども絶対的なものではないのです。投資に絶対は無いように。
 だからこそ、より有効なロジックや投資戦略を求め続けることが必要となります。そのためにはロジックや相場状況についての正確な理解はもちろん、つねに改善し続ける熱意も必要となります。
 このような作業を持続的に個人が行うことは、時間的にも労力的にも非常に困難です。ですから、上手く専門家の力を借りることが大切になります。
 健康面では医者に相談するように、法律面では弁護士に相談するように、投資面では専門家に相談することが有効となります。ただ、投資においては「誰がほんとうのプロなのか」を見極める目も必要となってきますが。
 ただの「販売員」なのか、「専門家」なのか。

 あなたのブレーンとして、投資のプロを有効に活用することが、複雑化する投資業界の中で、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。
 
 しっかりと専門家を見極める目を持つためにも、投資における重要ポイントを理解する力は必須です。
 あなたも少しづつ、楽しみながら勉強を続けていって下さい。

 

 


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